「グラン・プリ」感想
2020年 07月23日 16:31 (木)
<日本公開1967年>
アメリカ人のF1レーサーのピートは
モナコなどヨーロッパ各地を転戦する過酷なレースで
ライバルたちとしのぎを削っていた。
常に死と隣り合わせの彼らはプライベートでも癒やされるどころか
それぞれに色恋沙汰で揉めている。
やはりピートも皆と同じように男女の問題を抱え妻とも別れる羽目に。
そんな時、彼はホンダ・チームの矢村から誘いを受けた。
やがて実力を買ってくれた矢村のもとでレースに参戦したピートは
期待通りの強さをみせていく。
こうしてライバルたちと競り合いながら
いよいよイタリアでのグラン・プリ最終戦に挑むのだが…。
(yahoo!映画より引用)
男性のドライバーの顔の見分けがつかなくて、全く何の情報もないまま鑑賞したこともあり、最初はどういう人間関係なのかさっぱり掴めませんでした。
そもそも誰が主人公なのかすらわからないまま終盤まで進み、ラストにようやく「ああ!勝った者が主人公というワケか〜!」というテイタラク。
でも逆にそれが面白かったんですよ。
だって誰が勝つのかわからない方が面白いでしょ、レースなんだから。
登場する女性陣の方は、しっかりと区別のつく造形になっているので、そちらの視点で物語を見ていくと理解しやすかったのも確か。
一番最初に出てくる美女が、元モデルという設定でもあり目を引きました。
この美女はドライバーのひとりの妻でもあるのですが、夫が事故で大怪我をしたことで我慢できなくて別れる別れないの痴話喧嘩をする、というのが男女関係の物語の主軸であります。
そういう意味では、レースの勝敗という男の世界の物語の裏に、男と女のもう一つの物語がある、とても良くできた作品だと思います。
モータースポーツというのは、他のスポーツと比べ物にならないくらい、命の危険の伴う物でしょう。
そんな世界で戦う男の妻になるのなら、事故が起こることなど予測はしていたはず。
恋人ではなく妻になったのなら、その覚悟があってこそ神の前で結婚の誓いをしたんじゃないの?と元モデル美女の取り乱す姿に、見ていてちょっとイラつきました。
命を賭けて戦いに赴く、というのは戦国武将に通ずるところがあるように思います。
だとしたらその妻は戦国武将の妻、そういう視点で物語を追って行くのも悪くないです。
命を落とした男の妻と、これから妻になろうとする女、そして命を落とした男の母、様々な女性が登場しますが、どの登場人物も凛として美しいです。
180分と若干長いのですが、レース部分は早送りしてみても大丈夫。笑
機会があれば是非ぜひ!

インターミッション
2016年 10月19日 00:05 (水)
午前10時の映画祭というのを知ってから、観たい作品は色々あったのですが、うちからアクセスの良い場所がなくて、なかなか機会がなかったんです。
今年の始め頃にこの作品が4Kになって蘇ったというニュースを聞き、これは是非とも観に行かなきゃと思い、頑張って満員電車に揺られて行ってきました。
それにしても207分は長いですよねぇ。
途中休憩の時間に立ち上がって、少し体をほぐしたんですけど、それでも結構腰がツラかったです。
両脇の席が空いてたので、割と楽な姿勢はとれたんですが。
時間が長い分だけ沢山の物語が詰め込まれた、見応えのある作品なのは間違いありません。
画像は確かに綺麗になっていたと思います。
けど音がどうにもあまりよろしくなくて、キンキン耳障りだし台詞は聞き取れないし、あれはなんとかならないもんでしょうか。
家で観る時には日本語字幕で観ていたので、台詞の聞き取り辛さは克服できるんですけど、音の悪さは映画館だと余計にひどく感じてしまいましたわ。
近頃は白黒作品をカラーにするのも当たり前のようですが、この作品は白黒のままにして欲しい。
カラーになんてなったら、その美しさが損なわれてしまうと思うのです。
白と黒の対比が最も美しかったのは、米を盗まれたことで諍いになる二人の百姓のシーン。
黒い床板の上にこぼれた米粒の白さの、なんと美しかったことか!
三船敏郎の演じる菊千代というキャラの愛おしさが、観る度に増して行くように思いました。
一番最初に菊千代が登場するシーンでの、肌の白さとヒゲの黒さも白黒作品ならではの美しさでしょう。
それまであまりパッとしなかった沢山の人物の中にあって、菊千代の目の輝きが印象的で、ひときわ目をひきます。
侍のリーダー勘兵衛も同様に、ツルピカに剃ったばかりの頭とともに(笑)目をひく映像になっているのは、演出なのか役者のオーラなのか、あるいはその両方か。
出てきた時から終始騒がしく派手派手しく、にぎにぎしくて仕方ない菊千代の、最期の姿の静けさが胸を打ちます。
そのあまりのあっけなさが、切なくて哀れでなりません。
4つならんだ土饅頭のうち、かろうじて菊千代のそれとわかる刀の鍔の大きさが、これまた切ない。
この作品をハリウッド風にリメイクしたのがユル・ブリンナー主演の「荒野の七人」。
さらにこの「荒野の七人」をリメイクした「マグニフィセント・セブン」という西部劇が来年年明けに日本公開だそうです。
ジュラシック・ワールドで主演だったクリス・プラット(わりとタイプ)も7人のうちの一人とのこと、楽しみです。
七人の侍 感想その1 感想その2
次に観るなら荒野の七人という人はコチラを→

次に観るならマグニフィセント・セブンという人はコチラを→

ジェイソン・ディスクが決まらないので
2015年 04月03日 00:02 (金)

楽天の期間限定ポイントが3000と少々たまっていることに気がついたのは、期限の切れる6時間ほど前のこと。次に買うディスクはジェイソンの物にしようと思っていたのに、未だどの作品を購入するかが決まっていませんでした。という訳で仕方なくこの「隠し砦の三悪人」のブルーレイをポイントで購入。三船敏郎ディスクはまずコレから、と思っていたので良しとしましょう。ちょうどレンタルで見直したばかりだったので、まだ封は開けていません。楽しみにとっておきます。
こういう古い作品の時代劇と、最近の時代劇との一番の違いは、雑兵とか百姓を演じている人たちのリアリティだと思います。昔の人たちは、いわゆる大部屋俳優という人たちなのでしょうね。本当に食うや食わずだったようで、どの人も皆肋骨が浮き出しているくらいガリガリです。現代ではそんな人はなかなか見かけないでしょ。最近の時代劇に出てくる、肉付きと肌ツヤと血色の良い百姓たちを見ると、きっと豊作続きなんだろうなぁ、と思わずにはいられません。そういう部分のリアリティは望むべくもないということですな、残念ながら。
リメイク版との観比べはコチラの記事にあります。
三船敏郎主演「風林火山」1969年
2014年 11月26日 17:21 (水)
井上靖の小説を原作とした、武田信玄に仕えた軍師山本勘助(三船敏郎)の物語です。とにかくキャストがえらく豪華。ラストに石原裕次郎が出てくるんですが、何故だか一切台詞がありません。まだ駆け出しの新人だったのかしら?時代感覚がまるきしつかめないわ。
165分と時間がいくらか長いことを除けば、なかなか見応えのある作品でした。原作を読んだことがあるはず(めずらしく覚えている)なんですが、山本勘助ってあんなにカッコ良かったっけ?というのが第一印象。主君武田信玄役の中村錦之介より目立ってるんだもの。まぁ主役なんだから当然ですが。
ちょうど一回り年下の萬屋錦之介(私にはこっちの名前の方が馴染みがあります)が、全く臆することなく三船敏郎に対しているのも見事。彼の若くて血気盛んな武田信玄もかっこいいです。二人一緒に頭を丸めるシーンなどもあり、この主従関係も見ていて惚れ惚れするくらい美しい。
そして美しいと言えば、ヒロイン由布姫役の佐久間良子の美しいこと。1970年に平幹二朗と結婚してますから、まさに美しさの頂点にあった時期なんでしょうね。1974年に長男平岳大誕生、って・・・あら?平岳大既に40歳なの?まだ独り身ですよね?それは
余計なお世話でしたかな。
黒澤明監督作品「赤ひげ」感想忘れちゃったよ・・
2014年 11月24日 13:31 (月)

レンタルの空くタイミングがうまく合わず、ようやく観賞できたと思った直後、ウシジマくん祭りに突入したのがちょうど一ヶ月前。いろいろ感じたことはあったけど、すっかり忘れてしまいました。ただ一つ、不朽の名作であることは間違いないと思ったのは確か。
また加山雄三に対するイメージが変わったのも確か。私の抱いていたのは「ぼかぁ幸せだな〜」とか言いながら、歌ってる元若大将という物でした。でもちゃんと演技のできる方だったんですね。物語の主役は加山雄三演じる保本ですから。
赤ひげになるため、三船敏郎がヒゲを自分で染めた(脱色した?)というエピソードがあるので、頑張ってネット検索かけて探したカラーの画像がコレ↑なんですが・・・。どかこにもっと良い画質の物はないのかなぁ。白黒作品だからあんまり赤ヒゲ感がないのが、ヒゲハゲ観察者としてはちょっと残念でした。
三船敏郎主演「太平洋の地獄」1968年
2014年 10月05日 13:09 (日)
山本五十六とか東郷平八郎などを演じているからでしょうね。ちょろっと調べてみたのだけど、自分がどの作品を観てそういうイメージを抱いたかまではわかりませんでした。というか、そもそも戦争物はどの作品も観ていないような気がする・・オイオイ。
戦争物の映画って、観終わってあんまり楽しい気持ちになることはないジャンルなのですが、世界のミフネも観ておかなきゃ、ということでレンタルしてみました。戦争の無意味さを訴えるには、最適なラストとなっています。でも三船敏郎の良さはたっぷり堪能できましたわ。
戦争中の太平洋の孤島に、日米双方の兵士が一人ずつ取り残され、最初は反目しながらも、協力することがお互いのためになることに気付き・・・という人間ドラマです。出演者は三船敏郎とリー・マーヴィンのたった二人。台詞もほとんどありません。
取り残されサバイバル生活をしているので、二人ともヒゲぼーぼーです。黒々した髯の三船敏郎に対して、リー・マーヴィンは白い髯、まさに黒髯VS白髯の闘いです。てっきりリー・マーヴィンの方が年上なのかと思っていたら、4つも年下でした。三船敏郎は1920年生まれ、リー・マーヴィンは1924年生まれです。でも作中で確か三船敏郎は相手のことをおっさん呼ばわりしてたような・・まぁ日本人は若く見えますからねぇ。
終盤、二人がハサミで髯を剃るシーンが出てきます。私としては、しっかり本気で剃っているところが観たかったんだけど、そこはあっさりカット。ハサミでそんなにツルツルにできるもんなの?と突っ込みを入れたくなるくらい、ピカピカになった三船敏郎の顔を見て「あ!私がイメージしてた軍人の三船敏郎だぁ!」と思いました。
同様に終盤、三船敏郎がリー・マーヴィンのことを呼ぶのにある言葉を使います。私としてはコレが一番ツボでした。次こそは「赤ひげ」観なきゃね。
「椿三十郎」新旧見比べてみました。
2014年 09月17日 18:20 (水)
ピチピチに若い加山雄三が目に眩しい。敵役の仲代達矢も良かった。その仲代達矢演じる半兵衛に「いい子だ」と言われ気恥ずかしいのか、照れくさいのか、なんとも説明しがたい表情を見せる三船敏郎はもっと良かった。
翌日織田裕二主演の物を観賞。まさかあそこまで旧作をなぞった作りになっているとは。なんでここまで同じ物を作る必要があったのだろう、と不思議に思いながら観ていました。そして緊迫のラスト、三十郎と半兵衛の一騎打ちのシーン。
三船敏郎のシーンは、あまりに一瞬のことだったので、何度も見返してようやくその動きが確認できました。織田裕二のシーンは、スローモーションでのリプレイが追加され二人の動きを確認できるような作りにはなっているのですが、それでもやっぱり見返さないと何が起こったか良くわかりませんでした。
結論として、この作品の一番大きなメッセージ「本当に良い刀は鞘に入っている」これをさらに強調するためのリメイクだったのか、という解釈に至りました。ふ〜む、なるほど。けどこれは二作続けて観たからそう感じただけなのかも。
「七人の侍」の主役は誰?
2014年 09月12日 23:21 (金)
七人の中、いえ荒野の七人も加えた14人の中でいちばん際だっている人物は、やはり三船敏郎演じる菊千代でしょう。菊千代は侍もどき。偽の系図を持ってきて自分は侍だと言い張りますが、リーダーの勘兵衛は最初から彼は侍ではないと見抜いていたようです。百姓の裏事情にも通じていることから、それは観客にも伝わります。
この作品以外でほとんど三船敏郎を知らなかった私は、菊千代の何が良いのだろう?と思っていました。けれども最近いくつか彼の他の作品を観て、ようやくその良さがわかるようになってきました。これ一作で、三船敏郎の様々な表情、喜怒哀楽の全てが見られるのです。
持て余し気味ですらある長い刀をふるって、侍のようにいきがる様。菊千代という名前が似合っていると言われ、照れくさそうにする様。刈り入れ作業の娘の尻をたたき、鼻の下を伸ばす様。一人生き残った赤児を抱いて大泣きする様。そしてあっけないくらいの最期。感情の起伏の激しい菊千代というキャラを演じる三船敏郎の演技が光ります。
三船敏郎作品はたくさん未見の物があるので、これからボチボチ観賞して行こうと思います。ジェイソン祭りも終わった訳じゃないし、いつの間にかこっそり浅野忠信祭りなんかも始まってます。山田孝之祭りは当分終わらないでしょう。要するに【男前祭り】よね。私ったら、なんて多情者なんでしょ。あ、そういえば堤真一祭りもやりたいんだっけ、おいおい。
不朽の名作「七人の侍」
2014年 09月01日 15:28 (月)
音があまり良くなくて、台詞が聞きづらいというのもあるのですが、何より聞き取れてもわからない単語がしばしば出てくるんですわ。文字にしてみると、ああそういう言葉なのか、とすんなり理解できますから。
思ったよりメッセージ性の強い作品なんですね。最近はこういうのは説教臭いと嫌煙されそうですが、娯楽性とのバランスも良いので私はあまり気になりません。『農民というのは心配ばかり』『勝ったのは百姓たちだ』etc. 「荒野の七人」にもそのまま使われている、印象的な台詞がたくさんあります。ですが私が一番心引かれたのは以下の物。
『人を守ってこそ自分も守れる。己のことばかり考えるやつは己をも滅ぼすやつだ。今後そういう奴は・・・』
この作品は上映時間が207分と長く、途中に休憩を挟んで上映されていたようです。レンタルしたDVDは前後編の二枚になっていて、上記の台詞は前編の最後に出てくる物です。口にしたのは侍たちのリーダーである勘兵衛という人物。「荒野の七人」ではユル・ブリンナーの役柄のポジションにあたります。
侍たちに野武士退治を依頼してきた農村には、川向こうに三軒だけ離れて建っている家がありました。村全体を守るため、この三軒の住人に家を捨て村内の防衛にあたらせようとしたところ、頑に抵抗された勘兵衛が発した台詞です。3軒のために20軒を危険にさらす訳にはいかない云々から続き、人間は社会的生き物であることを強く訴えています。
特に私が印象的だと感じたのは『今後そういう奴は・・・』と、結論づけることなく台詞が終わっているところです。勘兵衛はあの後いったい何を言いたかったのか、観ている者に判断を委ねているのです。60年前の世相(あくまでも想像です、何せ生まれる前のことだから)と今の世相とを照らし合わせて、無粋を承知で私なりに言葉をつないでみました。
『人を守ってこそ自分も守れる。己のことばかり考えるやつは己をも滅ぼすやつだ。今後そういう奴は・・・どんどん増えて世の中がおかしくなっていくかもしれない』
映画「蜘蛛巣城」黒澤明作品
2014年 08月12日 22:19 (火)
特に今回はモミアゲの素晴らしさに感動しました。真横から見て美しいモミアゲが、正面から見るとさらに美しかった。外側にクリクリっとカールして、ちょうど魔法使いサリーのパパみたいな感じ。←こんなんでわかる人いるのかな?苦笑。ああいう髯って本当にあるんだと感動したんです。
もちろん髯だけでなく、演技も素晴らしかったです。シェイクスピアのマクベスを戦国武将にアレンジした物語のこの作品。蜘蛛巣城の主を謀殺し、殺した者の亡霊に怯え、自滅していく武将というのが三船敏郎の役どころです。前半は妻の言葉にのせられ、図らずも主を殺めることになり、いくらか情けなさの漂う殿様といった風情でした。
その後、屍の山を築いてやる、と腹をくくって悪を極める決意をしてからの豹変ぶりが見事。洗っても洗っても手についた血がとれない、と狂気を見せるようになった妻を見ても動揺することなく、落ち着き払っていられるようになります。俺は戦に負けることはないのだ、と兵たちに言い放つシーンでの、下から見上げたアングルの彼は本当に美しかったです。
ラストの大量の矢を射かけられるシーンの迫力は半端ないです。実際の矢を射ているとのことですが、どういう方法で撮影したんでしょうね。でも一番迫力あると思ったのは、致命傷になる矢がささる瞬間だったりするの。こっちもどういう撮影方法だったのか、すごーく気になります。今とちがってメイキング映像なんてのが残ってないのは本当に残念ですわ。