「小さいおうち」感想

小さいおうち
映画「小さいおうち
作品情報



小さいおうちの中で起こった小さい事件を巡る物語。舞台となる赤い屋根の小さい家や、家具調度品、和服洋服の衣装、そして質素だけれど豊かな暮らしぶりなど、昭和初期のノスタルジックな雰囲気がたまりません。

小さいおうちに住む少年キョウイチが、ちょうど私の親の世代。私の母の実家はまさにこの小さいおうちのような佇まいで、今も伯父夫婦が暮らしています。築100年を越えようかというのに、全くガタが来ていない見事な造りの木造家屋です。あの当時なら当たり前のことなのかもしれませんが、築15年で既にあちこち立て付けが悪くなっている我が家とは比べ物になりません。まさに昭和の遺産とでも言いたくなるくらい。どこかのフィルムコミッションに登録すればいいのにとも思います。

作品の時代設定が戦時中ということになってはいますが、それはあんまり関係ないような気がしました。同じ一つ屋根の下に住んではいるけれど、家族ではなく血縁もない、女中さんという立場が必要だから、この時代の物語になったというだけなのでは、と私は思います。

核家族(以下?)が当たり前の現代では、家族以外の者と一緒に暮らすという感覚は、なかなか理解できないのかもしれません。でも女中のタキはこの小さいおうちで暮らしていた日々がとても幸せだったのだということが、画面からひしひしと伝わってきます。物語のキーとなる彼女の行動も、仕えている奥様を大切に思っていたからこその決断だったはず。妙な嫉妬とか、勘ぐりをしない彼女がとても清々しい。

そしてタキに慕われる奥様時子役の松たか子が、また素晴らしい。美しく優しくそして聡明な妻。でも仕事に忙しい夫とは、少しすれ違いを感じている、という役どころです。夫がタキに持ってきた縁談が、親子ほど年上の男性であることに憤慨する時子が良かった。タキのことを大切に思っていることが、明快に表現されていました。

それにしても着物の裾から覗く、時子のふくらはぎの色っぽいこと。階段を上がる白い足袋と白いふくらはぎ、それだけの映像でエロスを表現してしまうなんて、見事としか言いようがありません。

タキが女中としてこの小さいおうちで暮らしたのは、ほんの数年のことだと思います。たとえわずか数年であってもその時感じた幸福感は、その後の長い孤独な人生を耐えていくために十分な密度だったのでしょう。宛先の書かれていない封のされた手紙を、捨てることなく大切に取っておいたのは何故?壁にかけられていた赤い屋根のおうちの絵はどこで手に入れたの?あれこれと小さな謎に思いを巡らせることで、いつまでも観賞の余韻に浸れる、まさに心に残る映画だと思います。未見の方にはゼヒ是非オススメです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
せっかくですのでついでにポチッと↓よろしくです。


スポンサーサイト

theme : 邦画
genre : 映画

了解

了解。これ、原作読んでアレだったんで観てないけど、映画は良さそう・・観るよ。ありがとう。

あのお家が大好きで、そこの人たちも大好きでそこで働いている自分も大好きで幸せで・・・。女中としてのプライドと胸の奥の人間として(女として?)の葛藤が凄く上手く描かれていた気がした映画でした。松たかこがつやっぽくて良かったけど、板倉役にちょっと不満が(笑)

Re: タイトルなし

コメントありがとうです、こうこさん。

> 。松たかこがつやっぽくて良かったけど、板倉役にちょっと不満が(笑)

あ〜、あの男性のどこに時子が惹かれたのかピンとこないのは確かにあるかも。
でも見た目じゃない、ってのがまたミソなんじゃないでしょうかねぇ。

Re: 了解

コメントありがとうです、きたあかりさん。

> 了解。これ、原作読んでアレだったんで観てないけど、映画は良さそう・・観るよ。ありがとう。

小さいおうちが空襲に遭うシーンの造形がユニークです。
目に映る物に惑わされないよう、しっかり五感を研ぎすまして観てくださいませ。

早速

原作を読んだ後に映画化されたのは知っていましたが、私のイメージを大事にしたいと映画はしばらく観ませんでした。
映画を観たのはいつだったかな?
受賞した華の演技を観るためだったのに、意外にも松たか子の存在感の大きいそれに驚きました。彼女ももっと高く評価してもらいたかったです。
原作ではタキが時子に想いを寄せる感情が、映画より更に踏み込んで描かれてあったように思えます。
書かれていない封のされた手紙を、捨てることなく大切に取っておいたのは、上の事情が理由だと私は受け取りました。読後は自信がなかったのですが、映画を観てはっきり確信できたのは良かったです。
うろ覚えですが、時子の友人がいましたよね。たぶん、彼女も似たような感情を持っていたのではないでしょうか?タキに張り合う感情も匂わせてあったような・・・。

原作者である中島京子の他の作品も素晴らしいと思います。
それについて、もうひとつのブログに書いた覚えがあるのですが探せませんでした(笑)。

Re: 早速

コメントありがとうです、しずくさん。


> 受賞した華の演技を観るためだったのに、意外にも松たか子の存在感の大きいそれに驚きました。彼女ももっと高く評価してもらいたかったです。

私も松たか子の演技は素晴らしかったと思います。松たか子あっての黒木華の存在感だったと感じました。

> うろ覚えですが、時子の友人がいましたよね。たぶん、彼女も似たような感情を持っていたのではないでしょうか?タキに張り合う感情も匂わせてあったような・・・。

洋装の良く似合う派手な顔立ちの女性ですよね?確かワンシーンだけの登場だったかと。
なるほど〜そういう意味合いを持たせるためのワンシーンだったのですね。

 ケフコタカハシ さん、こんばんは
 先程は、コメントありがとうございました

築15年で既にあちこち立て付けが悪くなっている我が家
>本日、給湯機の配管ら水漏れ、天井からポタポタ落水、最低3日後まで銭湯暮らしです。(涙)
ちなみに築25年。(笑)

壁にかけられていた赤い屋根のおうちの絵
>あれが有るという事は、板倉正治の帰還は何時か解らないけど知ってはいたのですね。(この名前、板倉商事に脳内変換されて困る)
時子奥様の消息は必死に探したけど、彼の事はどうだったんだろう。
僕の貧困な願望だと、「会わなかった」気がします。
(出征前の玄関先の別れ、何で板倉はタキを抱きしめたのかなァ、二股男で浮気性に見えちゃう。(単なるヒガミ)

作品の時代設定が戦時中ということになってはいますが、それはあんまり関係ないような気がしました
>この作品、世話物として非常に良く出来てますが、その通奏低音として常に戦争が聞こえています。
「二十四の瞳」と同じで戦場を描かない反戦映画の側面を持っていて、その部分でも成功してると僕は思っています。

洋装の良く似合う派手な顔立ちの女性
>蛍ちゃん。ついでに純は両手に花という贅沢な役。(笑)

Re: タイトルなし

コメントありがとうです、鉦鼓亭さん。

> あれが有るという事は、板倉正治の帰還は何時か解らないけど知ってはいたのですね。(この名前、板倉商事に脳内変換されて困る)
> 時子奥様の消息は必死に探したけど、彼の事はどうだったんだろう。
> 僕の貧困な願望だと、「会わなかった」気がします。

板倉の作品はほとんど外に出ていない、みたいな説明がありませんでした?
そんな貴重な絵がサラッと飾られていることに驚いたような記憶が。
あるいはただのポスターなのかな?とか。
板倉を通じて時子のことを知った、もアリかもしれないとか。

> 「二十四の瞳」と同じで戦場を描かない反戦映画の側面を持っていて、その部分でも成功してると僕は思っています。

ああ、なるほど〜。市民の目線で見た戦争、ですな。
そういえば、私の伯母が昭和18年前後に東京のどこかの女学校に通っていたらしいということを、つい先日知りました。
私の田舎は四国なのですが、戦争が厳しくなってきたので伯母は女学校を卒業することなく四国に帰ってきたのだそうです。
地下鉄に乗って銀座に美味しいものを食べに行ったことを、懐かしそうに嬉しそうに話していたことを思い出しました。
あれもいわゆる戦時中の出来事だったとは、まさにこの作品のタケシと同じズレた感覚を自分が持っていると気付いた瞬間です。
Secret

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

リンク

観たいと思っている作品

「パッセンジャー」「ファウンダー」「エルネスト」「デイアンドナイト」「ハード・コア」「ベイビー・ドライバー」「DCスーパーヒーローズvs鷹の爪団」「ゴッホ」

手に入れたいソフト

「ドラマうぬぼれ刑事」 「インサイド・ルーウィン・デイビス名もなき男の歌」 「皆はこう呼んだ鋼鉄ジーグ」 「サブリナ」新旧2作

一生観ないと誓った作品

「スパイダーマン」「ゴジラを始めとした大きい物の出てくる作品」「ジョーズ」「ゼログラビティ」「エイリアン」「オープンウォーター」「ブラックスワン」「ポセイドン・アドベンチャー」「E・T」「レッド・ドラゴン」「ハンニバル・ライジング」

最近観た作品

「楊家将〜烈士七兄弟の伝説〜」「イブの総て」「百万長者と結婚する方法」「スーザンを探して」「おしゃれ泥棒」「子連れ狼」「PAN」「バクダッドカフェ」「グッド・ウィル・ハンティング旅立ち」「トースト」「坂の上の雲」「SMOKE」「エアフォースワン」「シュガーラッシュ」「ワイルド7」「ライフ・イズ・ビューティフル」「予告犯」「グラスホッパー」「ひみず」「ヒメアノ〜ル」「パリ、テキサス」「パパは出張中」「キングオブエジプト」「SCOOP」「ママ、ごはんまだ?」「イーグル・ジャンプ」「ジュピター」「暗殺の森」「神様メール」「王様のためのホログラム」「トランボ」「ダンス・レボリューション」「海賊と呼ばれた男」「無伴奏」「アスファルトジャングル」「ちはやふる」

ヒゲハゲ満足度について

映画やドラマなどの映像作品において、ヒゲハゲ観察ポイントを★の数で表しました。ヒゲハゲが期待通りの場合の3★★★☆☆を標準とし、期待を上回ると4〜5、下回ると1〜2となります。本来ならヒゲハゲを期待できない作品(アニメを始めとした子ども向け作品、あるいは若者向け青春物語等)において、何かしら麗しいヒゲハゲが見られたなら★がつく場合もあります。

あなたの清き一票を!

プロフィール

ケフコタカハシ

Author:ケフコタカハシ
半世紀を越える人生のほとんどを西洋かぶれで過ごしてきた主婦。ここ2年ほど山田孝之演じる実写版ウシジマくん中毒。「闇金ウシジマくんthe final」13回観ました。バイバイウシジマなんて言いませんからね〜!

どーでもいい日常の記録
「チェックも縞のうち」


闘病記の
「女の終活日記」
もよろしく。

現在の主な観察対象:山田孝之、ジェイソン・ステイサム
初恋の禿:ユル・ブリンナー
初恋の髭:デニス・ウィーバー
初恋の髯禿:ショーン・コネリー
大きくなったらなりたい物:仙人
将来の夢:一人暮らし
今一番行ってみたい場所:グランドキャニオンとラスベガス、香港
将来の希望:山田孝之の美白ヒゲを拝むこと

カウンター

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示