映画「恋の罪」感想
2016年 08月26日 00:05 (金)
梅雨が明け天候が安定し体調も整ってきたので、思い切って(笑)園子温作品に手をつけてみました。これも私にとってはある意味肝試しよね。
今回も宵乃さん主催ブログDEロードショー「夏のきもだめし企画」への参加です。
宵乃さんのブログ『忘却エンドロール』はコチラ。
猟奇殺人事件が起こったところから物語が始まり、途中には幽霊らしきのが出てきたりと、この季節にはピッタリなひんやりした作品でした。
でもそんなに怖くはなかった、何しろテーマは全く違うところにあったので。
怖さという意味では前作「冷たい熱帯魚」の方が、人間の狂気のような物の描写に背筋がゾゾっとしたように思います。
私が感じ取ったテーマはタイトルそのまんまの恋の罪、もう少し平たく言うと嫉妬心のような物。
3人の女性の物語をオムニバス風(あくまでも風で、実際は複雑に絡んでいる)に仕立ててあります。
女刑事のカズコ(水野美紀)大学教授のミツコ(冨樫真)小説家の妻イズミ(神楽坂恵)、この3人の恋と愛と性とを赤裸々に時にコミカルに、そしてえぐいほどリアルに描いています。
キャスティングが本当に素晴らしいです。
大学教授でありながら夜は娼婦をしているミツコの造形がリアルすぎてえぐい。
長い髪を後にまとめただけで、生え際に少し白い物が見えていたり、肌が荒れていたりと堅物そうな昼の顔が、夜になると一転濃い化粧とケバケバしい身なりで、とても同一人物には見えないの。
一方で地味で清楚で、むしろいくらかやぼったいとも言えるような造形のイズミも素晴らしい。
30歳になったばかりの、飾らないそれでいてにじみ出るような美しさがあります。
大学キャンパスでミツコと並んで座った時の、髪の毛のツヤツヤして美しかったことといったら。
ミツコの艶のない髪と荒れた肌との対比が、これまたえぐいのよ。
3人の女性の設定年齢と役者の実年齢がほぼ同じなのは、偶然ではないのでしょうね。
できる(と思しき)女刑事カズコは夫も子どももあるのに、不倫を止められないゲスです。
で、この不倫の相手がとある芸人さんなんですよ。
いや〜これが本当にビックリでした。
ここのキャスティングも見事。
この芸人さんの役どころを見るだけでも、この作品を観る価値はあると思います。
けど何より印象的だったのは作中に何度も登場するポエム。
田村隆一の「帰途」という詩の一節です。
言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる
これをきっちり三回イズミにリフレインさせる、園子温はつくづく詩人なんだと思いました。
3人の女性のヌードに売春に不倫、その上猟奇殺人とやたら刺激的なモチーフをちりばめながら、とても文学的香りのする稀有な作品だと思います。
園子温の神楽坂恵への愛も感じられ、そういう点でも私の印象は◎です。
未見の人は是非ゼヒ。
詩の得意な方はコチラを→
詩の苦手な方はコチラを→
次はやっぱりヒミズですかねぇ?
今回も宵乃さん主催ブログDEロードショー「夏のきもだめし企画」への参加です。
宵乃さんのブログ『忘却エンドロール』はコチラ。
猟奇殺人事件が起こったところから物語が始まり、途中には幽霊らしきのが出てきたりと、この季節にはピッタリなひんやりした作品でした。
でもそんなに怖くはなかった、何しろテーマは全く違うところにあったので。
怖さという意味では前作「冷たい熱帯魚」の方が、人間の狂気のような物の描写に背筋がゾゾっとしたように思います。
私が感じ取ったテーマはタイトルそのまんまの恋の罪、もう少し平たく言うと嫉妬心のような物。
3人の女性の物語をオムニバス風(あくまでも風で、実際は複雑に絡んでいる)に仕立ててあります。
女刑事のカズコ(水野美紀)大学教授のミツコ(冨樫真)小説家の妻イズミ(神楽坂恵)、この3人の恋と愛と性とを赤裸々に時にコミカルに、そしてえぐいほどリアルに描いています。
キャスティングが本当に素晴らしいです。
大学教授でありながら夜は娼婦をしているミツコの造形がリアルすぎてえぐい。
長い髪を後にまとめただけで、生え際に少し白い物が見えていたり、肌が荒れていたりと堅物そうな昼の顔が、夜になると一転濃い化粧とケバケバしい身なりで、とても同一人物には見えないの。
一方で地味で清楚で、むしろいくらかやぼったいとも言えるような造形のイズミも素晴らしい。
30歳になったばかりの、飾らないそれでいてにじみ出るような美しさがあります。
大学キャンパスでミツコと並んで座った時の、髪の毛のツヤツヤして美しかったことといったら。
ミツコの艶のない髪と荒れた肌との対比が、これまたえぐいのよ。
3人の女性の設定年齢と役者の実年齢がほぼ同じなのは、偶然ではないのでしょうね。
できる(と思しき)女刑事カズコは夫も子どももあるのに、不倫を止められないゲスです。
で、この不倫の相手がとある芸人さんなんですよ。
いや〜これが本当にビックリでした。
ここのキャスティングも見事。
この芸人さんの役どころを見るだけでも、この作品を観る価値はあると思います。
けど何より印象的だったのは作中に何度も登場するポエム。
田村隆一の「帰途」という詩の一節です。
言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる
これをきっちり三回イズミにリフレインさせる、園子温はつくづく詩人なんだと思いました。
3人の女性のヌードに売春に不倫、その上猟奇殺人とやたら刺激的なモチーフをちりばめながら、とても文学的香りのする稀有な作品だと思います。
園子温の神楽坂恵への愛も感じられ、そういう点でも私の印象は◎です。
未見の人は是非ゼヒ。
詩の得意な方はコチラを→

詩の苦手な方はコチラを→

次はやっぱりヒミズですかねぇ?
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冷たい熱帯魚の監督さん
2016年08月26日 17:14
2016年08月26日 19:27
こ、これは大変インパクト強い映画でございました。確かに体調が悪いときは観ないほうが無難です。
ラストが恐ろしかった。ああなって、実は以前より幸せなんじゃないかと思えて、そう思える自分も怖かった。
ラストが恐ろしかった。ああなって、実は以前より幸せなんじゃないかと思えて、そう思える自分も怖かった。
2016年08月26日 21:22
この監督の作品は、とっても調子が良い時じゃないと・・・(^_^;)
観たいと思い続けている作品ですけどね。
観たいと思い続けている作品ですけどね。
Re: 冷たい熱帯魚の監督さん
2016年08月26日 23:34
コメントありがとうです、宵乃さん。
> が撮った作品なんですね。タイトルは知ってるけど、どちらも未見です(汗)
どちらも衝撃的な作品ですので、観る時にはかなりの覚悟が必要ですよ。
> 海外の作品より日本人が演じる作品の方が、演技やセリフ回しの微妙なところまで伝わってくるから、キャスティングは大事ですよね。
園子温は新人発掘のエピソードもたくさんあるんですよ。
聞くところによると撮影中のハードなダメ出しが、まるで部活のしごきみたいだそうです。
> が撮った作品なんですね。タイトルは知ってるけど、どちらも未見です(汗)
どちらも衝撃的な作品ですので、観る時にはかなりの覚悟が必要ですよ。
> 海外の作品より日本人が演じる作品の方が、演技やセリフ回しの微妙なところまで伝わってくるから、キャスティングは大事ですよね。
園子温は新人発掘のエピソードもたくさんあるんですよ。
聞くところによると撮影中のハードなダメ出しが、まるで部活のしごきみたいだそうです。
Re: タイトルなし
2016年08月26日 23:41
コメントありがとうです、きたあかりさん。
> ラストが恐ろしかった。ああなって、実は以前より幸せなんじゃないかと思えて、そう思える自分も怖かった。
いや、私もイズミは一番幸せだと思いますよ。
誰かを愛することを知り、生きているから。
そのうち彼女を本気で愛してくれる人にも巡り会えるでしょう。
ミツコは一番愛してはいけない人を愛してしまった。
それが彼女の悲しい結末を招いた。
カズコは誰も愛していない。
それは生きてはいるけど、とても不幸なことだと思う。
> ラストが恐ろしかった。ああなって、実は以前より幸せなんじゃないかと思えて、そう思える自分も怖かった。
いや、私もイズミは一番幸せだと思いますよ。
誰かを愛することを知り、生きているから。
そのうち彼女を本気で愛してくれる人にも巡り会えるでしょう。
ミツコは一番愛してはいけない人を愛してしまった。
それが彼女の悲しい結末を招いた。
カズコは誰も愛していない。
それは生きてはいるけど、とても不幸なことだと思う。
Re: タイトルなし
2016年08月26日 23:44
コメントありがとうです、バニーマンさん。
> この監督の作品は、とっても調子が良い時じゃないと・・・(^_^;)
> 観たいと思い続けている作品ですけどね。
全く同感です。
今回ようやく満を持して観ることができました。
バニーマンさんもしっかり体調を整えて臨んでくださいね。
> この監督の作品は、とっても調子が良い時じゃないと・・・(^_^;)
> 観たいと思い続けている作品ですけどね。
全く同感です。
今回ようやく満を持して観ることができました。
バニーマンさんもしっかり体調を整えて臨んでくださいね。
海外の作品より日本人が演じる作品の方が、演技やセリフ回しの微妙なところまで伝わってくるから、キャスティングは大事ですよね。
ケフコさんのレビューで、三人の女性が目に浮かぶようです。
楽しまれたようで良かったです!
今回もご参加ありがとうございました♪